キリフィッシュ君

「いちばん嬉しい瞬間はいつですか?」
そう聞かれたら、私は迷わず「まだ誰も知らなかったことを初めて見つけたとき」と答えます。科学の世界では、そんな特別な瞬間に出会うことがあります。そのときは思わずニヤニヤしてしまうほど、心が高鳴ります。こうした発見は、特別な才能は必要ありません。なんてことはありません。自分の研究対象に日々真剣に向き合い、「なぜだろう」「おもしろいな」と感じ続けることで、少しずつ近づいていけます。科学が好きな人であれば、きっと誰でもそうした気持ちを経験できるはずです。

私たちの研究室では、ターコイズキリフィッシュという年周魚を使って、「発生休眠」という現象を研究しています。この魚は、過酷な乾季を乗り越えるために、胚の発生を停止し、長期間にわたり休眠状態を保つことができます。まるで“生命の時計”が止まったかのような、不思議で魅力的な現象です。私はこの現象に出会ったとき、「時間の流れを制御するしくみ」がそこにあると感じ、「時間発生生物学(Chrono-Developmental Biology)」という名前の研究室を立ち上げました。

しかし!発生休眠の面白さは、まだまだこんなものではありません。このホームページに書かれている内容の100倍も、そして誰もが想像もしなかったような不思議が、きっとこの魚の中に隠れています。科学者としての人生はとても長く、その時々に、どのようなテーマに取り組むかは人それぞれです。もし当研究室で研究に取り組むことになったら、ぜひ「発生休眠」という現象の奥深さをじっくり味わいながら自分自身の発見を、そして「自分だけのサイエンス」見つけてほしいと思っています。その発見は、きっとこれからの人生を豊かにし、かけがえのない財産となるはずです。